『殺し愛』という作品の主軸は、シャトーちゃんとリャンハの関係性であり、その二人の関係性を決定づけたという点において、昨日考察したネルソン・ノーブルというキャラクターは、その内面を掘り下げ、考察することを避けて通れないキャラクターでした。
そういう意味で、同じく避けて通れないキャラクターになり得る可能性がある男が一人。
スンウ。
三檮会(さんとうかい)所属の構成員……恐らくは、幹部級の人物と思われるのですが……
ここから先は、『殺し愛』における、11巻にまで判明している事実がこれでもかと盛大に出てきますので、ネタバレが嫌な方は、この『続きを読む』をクリックせずに、回れ右をお願いします。
引用 Fe/KADOKAWA
一応空白のスペースも設けましたし、ここを読んでいる方は『殺し愛』の11巻を読破済み、あるいはネタバレかまぁぁぁん、という方のみだという前提に立って書いていきます、ご了承下さい。
以前、ホーの考察を行った記事でも意味深に匂わせてはおいたのですが、やはりスンウというキャラクターが握っているカギは、かなり重大なモノだと思えますし、かと言ってネタバレせずにこのキャラ考察できるほど私に力があるとも思えなかったので、ストーリーの根幹に関わるネタバレをお許し下さい。
まずは、事実のおさらいから。
この作品に出てくるソン・リャンハという男が過去に所属していた組織が三檮会(さんとうかい)というヤクザものの組織であり、最盛期には10万を超える構成員を抱えていましたが、1巻開始時点からカウントして5年前、彼が仕掛けた幹部暗殺事件において、一夜で首領を含む重役18人が殺されたことが原因で解体となっております、ここをまずは抑えておかないといけません。
引用 Fe/KADOKAWA
一方のスンウの初登場は2巻であり、リャンハに復讐を誓った男、ホーがその名前をFILE07で出したのが、名前の初登場。
FILE08では、回想シーンで姿も見せており、リャンハが三檮会(さんとうかい)の幹部候補に昇格することを、スンウがホーに語っているシーンであり、この話はトイレでされていたため、トイレの個室にいたリャンハにも聞こえていた、というシーンにもなります。
リャンハの回想から判断するに、スンウは部下であるホーとリャンハのいがみ合いに頭を痛めていたようで、リャンハにも『これからは無理にでも合わせてならないぞ 些細なことで目ぇつけられることもあるしな』と幹部候補に昇格した彼にアドバイスを送りつつ『ホーもホーだが お前もだお前だ お前 ホーに対してやたら挑発的なとこがあるぞ』とも指摘しています。
引用 Fe/KADOKAWA
多分、この指摘は的を射ており、これは回想の中でリャンハが『僕はホーさんが羨ましいんですけど 自由そうで』と言うのが、皮肉でも何でもなく、嫉妬してしまうくらいには本音だったからではないでしょうか。
スンウは『一度お前ら 腹割って話してみろ 仲良くやってくれりゃ何よりだ な』という発言後に、リャンハに銃殺されております。
さて、ホーはこのスンウの復讐のために、シャトーちゃんを拉致った上でリャンハと対決する訳ですが、対峙した際にリャンハはこんなことを言っています。
引用 Fe/KADOKAWA
『……残念です ホーさん ホー(あなた)とは「仲良くやってくれ」とスンウさんが最後に仰ったものですから 本当に 残念』
まぁ、ホーからすればブチ切れる挑発にしかなりませんし、リャンハも挑発目的で言った可能性が高いのですが、本当に挑発のみだったのか、という疑問が私には残ります。
まず、11巻でリャンハはとある人物の指示によって、ジンテイという腕利きの殺し屋? ヤクザ? によって拉致されています。
とある人物、と言うのがイーサン・黄(ホワン)ジュニア。
三檮会(さんとうかい)の首領であったイーサン・黄(ホワン)の息子である彼は、こんなことをリャンハに向かって言っています。
『どういったものだったのかな 謂れのない罪で背負った裏切り者の仇名は』
この数ページ後に回想が入るんですが、その回想に出てきたのがスンウ。
銃を持って、スーツ姿の男達を射殺した後のシーンであり、何でこんな回想が入ってくるのか……それはスンウが、ホーに向けて電話で話した会話からいくらか推測出来ます、
まだホーが外にいることを電話で確認したスンウは、タバコを買ってきてくれと頼むのですが、電話を切る前に、こう付け足したのです。
引用 Fe/KADOKAWA
『できるだけ時間つぶしてから戻ってこい 今日みたいな夜はろくなことが起こりゃしねぇもんだ』
スンウのこの発言は、ホーにはこの銃殺死体を見せられない、という意図が働いているでしょう。
同じくヤクザ者で切った張ったはやっていたであろう、舎弟のホーに見せられない銃殺死体。
ここから、幹部を殺したのはスンウだったのでは、という推測が成り立ちます。
11巻のこのシーンがでてくるまでは、スンウをリャンハが殺した理由は、6巻で彼が出会った、『本物』のソン・リャンハ及び、シャトーちゃん絡みかとミスリードするような描写があるんですよね。
『本物』のソン・リャンハが死んだのは、ヒロインであるシャトーちゃんが、彼女の視点からすると、正体不明の誰かに追われていたために、お父さんが旅行用のトランクに彼女を隠し、『かくれんぼ』していたところを、『本物』のソン・リャンハと、後にソン・リャンハと名乗る少年二人に保護されるのですが……
目が覚めると誰もいない真っ暗闇の中、恐怖のあまり箪笥、物置の中に、銃を持って隠れた幼いシャトーちゃんは、『本物』のソン・リャンハが戻ってきた際に、戻ってきた人物を正体不明の誰かだと思ったのか、単純に恐ろしかったのか、様々な複合的な要因があるでしょうが、扉を『本物』のソン・リャンハが開けた瞬間に発砲してしまいます。
引用 Fe/KADOKAWA
シャトーちゃんの父親を殺したのもスンウであるため、後にソン・リャンハと名乗る少年からすれば、スンウはシャトーちゃんの親を殺した上に、様々な不幸が絡み合った末に、自分を助けてくれた『本物』のソン・リャンハが死んでしまった遠因を作った男でもあったため、リャンハがスンウを殺し、三檮会(さんとうかい)を瓦解させたのは復讐が動機である、とミスリードするようにFe先生に誘導された……のかなぁと思うんですが、そういう意図、ありますよねFe先生? なかったら私の誤読だぁぁぁぁ(TーT)
まんまと誘導(?)された私ですが、もっと前からこれミスリードじゃね、と気付いた人もいるんだろうなぁ……
これまでの材料から考察すると、イーサン・黄(ホワン)ジュニアの発言と、回想に出てきたスンウの銃殺行為とホーへの発言から推測するに……
幹部を銃殺したのはスンウで間違いなさそう……と見えますが、これ、そうだとすると、時間軸を整理するとわかるんですが、ややこしくなるんですよね。
① リャンハ、イーサン・黄が襲われる所を救い、部下になる(11巻FILE65)
② リャンハ、三巻の番外編にて内通者を炙り出し、意図的に銃で自殺するよう仕向ける。ちなみにホーの発言ではこれが5件目の内通であるが、スンウ曰く、証拠も自白も揃っている、とのこと。
③リャンハ、三檮会(さんとうかい)の幹部候補に昇格される話を、スンウとホーがしているのをトイレで聞く(2巻FILE08)
④スンウ、11巻の回想で、どこの誰かは断定出来ないものの、ヤクザと思しき者を銃殺、ホーに『できるだけ時間つぶしてから戻ってこい』と電話で告げる
⑤ リャンハ、スンウを殺害(2巻FILE08)
で、③に関しては、重役会議でリャンハが幹部候補に昇格することを首領が発表する、とスンウがホーに告げています。
引用 Fe/KADOKAWA
加えて、⑤の殺害前に、スンウは『おう お疲れ あいさつまわりすんだのか?』とリャンハに尋ねており、これは幹部候補に昇格することに伴う【あいさつまわり】だと仮定すると、③の次に⑤がくるはずなんですよね。
殺した相手に挨拶なんて出来ませんから。
なので、④のスンウの殺害は、どこの誰を殺していたんだ、という話になってしまうんですよ。
これ、どういうこと(??)
ちなみに、11巻のFILE63では、誰の回想かは不明ですが、三檮会(さんとうかい)の首領、イーサン・黄と思しき人物がナイフで刺殺されているコマが存在します。
さらには、その下のコマで幹部らしき人も死んでおりますが、このコマが、スンウがホーに電話かけたコマとほぼ一致するんですよね、殺されている人物の服装、絵画、照明スタンド……
なので、私の考察では、幹部を殺害した有力候補は、先程も書いたのですがスンウになります、11巻現在では。
何か時間的なトリックとかでもあるのか、あるいは 【あいさつまわり】 と言うのが、幹部たちへのあいさつ回りではなく、他のものである可能性もありますしね。
ただ、首領殺害に関しては、まだ考察の余地があると思うので、そこは結末の予想を書く回に、まとめて執筆してみようか。
引用 Fe/KADOKAWA
リャンハの幹部候補昇格の発表を受けあいさつまわり、とありますが、このあいさつまわりの時には幹部や首領であるイーサン・黄は殺害されている可能性があります。
もしくは、昇格の発表をしてから、まとめて幹部や首領が殺されたか。
リャンハがスンウを殺害したのは、スンウが仕出かしたことの落とし前をつけるためであり、ホーの『落とし前つける時がきたぞ 裏切者』という発言が、凄まじく皮肉が効いてきます。
先に裏切っていたのは、実はスンウの方だった、なんてなると、ねぇ?
引用 Fe/KADOKAWA
ただ、これ……スンウも『……あーあ そーゆーとこがお前はダメなんだよ リャンハ』と言いつつ、抵抗らしい抵抗を見せていない理由が、この考察だけでは不明になってしまうんですよね。
ただ単純にヒットマンであったとか、下剋上を狙ったのなら抵抗の一つも見せるはず。
が、スンウは抵抗していないし、何よりリャンハがホーとの対決時に言ったこの言葉。
『……残念です ホーさん ホー(あなた)とは「仲良くやってくれ」とスンウさんが最後に仰ったものですから 本当に 残念』
これ、挑発ではなく、本当に言葉通りの意味であったなら、想像の余地がまだまだあるんですよね。
ここの考察するだけでもう一記事分出来そうなんで、とりあえず今回はこの辺りで。
そんな謎だらけのスンウの声優さんは、冷徹に殺しが出来て、かつホーのような末端の舎弟に対しても優しさを見せる、二面性を持った男の声……
子安武人さんはどうでしょうか。シリアスな口調で、かつ気だるげな声も絵になる子安さんであれば、
『……あーあ そーゆーとこがお前はダメなんだよ リャンハ』という台詞も、気だるげに、しかし真摯な声でリャンハに語り掛けてくれるのではないでしょうか。
追伸
スンウ役は土田大さん(つちだひろし)が演じております。
二期があればそのまま続投になるんでしょうけど、二期があれば重要な役処になるはずなので、ベテランさんの起用には大いに納得。
もっとも、二期がそもそもあるか、あったとして何巻までアニメ化するかによってかなり違ってくるんですが(汗)
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