復讐(ふくしゅう)とは、一般に不当な酷い仕打ちを受けた者が相手に対して行うやり返す攻撃行動の総称である ウィキぺディアより抜粋
復讐、という事象を貴方はどのように感じ、考えていますか。
引用 Fe/KADOKAWA
加害者が行使する正当な権利? 何も生まない虚しい行い? 憎悪や怒りの連鎖を招くだけの不法行為? それ以上の危害を加えられないための防衛行動? 色々な論があると思いますし、正解だと断言できる答えなんてどこにも無いのかもしれません。どれも正解であり、不正解でもあるという、そんな矛盾を孕んだ行いが、復讐というものなのではないか、と。
『殺し愛』という作品は、最初の一コマ目から殺人を行っているソン・リャンハはもちろん、ヒロイン兼主人公であるシャトー・ダンクワースの手も血に濡れており、昨日考察を行ったエウリペデス・リッツランも、9巻でソン・リャンハを殴ったことが、初めて人を殴った行いになっているくらいには、暴力行為に手を染めていない人種ではありますが、賞金稼ぎを生業とする『リッツランサポート商会』を経営する社長である以上、直接その手を血に染めていないだけであって、罪に塗れている可能性は否定できないでしょう。そういう意味では、賞金稼ぎの業界で事務的・経理的なサポートをしている、インドこと、ジム君ですら一服の清涼剤として『殺し愛』内にてゆるキャラ的扱いを受けているにもかかわらず、この円環から逃れられないのかもしれません。
引用 Fe/KADOKAWA
なんでこんな深刻な話題に切り込んでいるのかというと、これから考察するキャラクターは、復讐という報復行為と密接に繋がっているからであり、ソン・リャンハのこれまでの行いを考えると、その先行きを暗示している可能性もあるキャラクターでもあると個人的に考えているからです。
前置きが長くなりました。
『殺し愛』に明示されている名は、ホー。
三檮会(さんとうかい)所属の構成員であり、スンウ、という兄貴分のヤクザを殺されたことで、ソン・リャンハに復讐を誓った男。
『落とし前つける時がきたぞ 裏切者』
引用 Fe/KADOKAWA
彼のプロフィールでわかっていることは、そんなに多くはありません。何せ、3巻で退場してしまうキャラですからね、ホーは。
外見的な特徴としては、左頬に蜘蛛の巣っぽいような刺青を彫っており、頭髪を金に染めています。タバコを嗜み、過去の回想では直情径行的な性格で怒りが顔に出やすく、不機嫌になるとフグのように頬を膨らませておりましたが、現在はそのような面影はあります。
バイクに乗ってシャトーちゃんを襲撃していますが、運転しながら正確にフロントガラスに命中させる技量があり、さらには走行中のシャトーちゃんが乗る車両のタイヤにも命中させているため、銃の腕は相当なものだと思われます。
この際、シャトーちゃんが見事なドライビングテクニックで、車体をホーのバイクに体当たりさせていますが、神経が過去にやっていたオクスリのせいでいかれているため、大したダメージとは感じていない模様で、中々の化物っぷり。
また、心配して車を止めて様子を見に来てくれた善良なトラックの運転手を『ジャマ』という一言と共に撃ち殺す非情さも示しています。
引用 Fe/KADOKAWA
その戦闘力は中々のモノで、シャトーちゃん相手には圧倒。
まぁ、シャトーちゃんと戦ったのが、崖下から車が落下して脱出した後という、ベストには遠いコンディションであったこともありますし、二度目に至っては人質が取られていたことで、対等とは到底言えない条件下での戦闘だったことにも原因がありますが、そもそも彼女の傍には、リャンハという化物がいるにもかかわらず、そういう条件を整える事が出来たホーを褒めるべきなのは、リャンハの『しまった』『はー……完敗』という呟きからもわかります。
さらには、シャトーちゃんもやられっぱなしではなく、不意をうまくついて、ホーにスタンガンを打ち込めたんですが、にもかかわらずほぼノーダメージという信じられないタフネスぶりを見せてもいます。
過去の回想を除けば、ホーの出番は3巻まで。
回想でも出番はあるのですが、それ以上に彼がこの『殺し愛』という作品に残した爪痕は中々に壮絶。
ネタバレになってしまいますが、ホーは3巻で、リャンハと闘い善戦しています。何せあのリャンハが手傷を負っていない、ベストコンディションと思しき状態で、なおかつ一対一で真正面から戦ったにもかかわらず、会心の一撃をもらっていますからね。
引用 Fe/KADOKAWA
リャンハが危機に陥るのは11巻現在では、大体シャトーちゃん絡み、もしくは不意打ちを受けての二つであり、その二つにしてもホーから受けた古傷で動きが鈍くなることが遠因になることが多々あります。
メインキャラクターの各種戦闘行動及び日常生活に著しい制限をかけることがある、という意味でも、もうすでに退場しているにもかかわらず、深い爪痕を『殺し愛』という作品に残しているキャラクターであり、ホーにトドメを刺した後にリャンハが呟く『大したもんです、ホーさん』と言う台詞は、本編ではリャンハの表情がカットされているため、かなり上から目線で皮肉めいて聞こえますが、3巻の番外編を読むと『弾を正面に受け続けながら向かってくるなんて人間業じゃないな 神経を殺してでもいたのか……』と、そのポーカーフェイスに反して、リャンハは脅威と感じていたのがわかります。
引用 Fe/KADOKAWA
そりゃそうでしょうね、銃を前にして怯みもせず、自分を殺すために前へ前へと踏み込んでくるのですから、命知らずという言葉でさえまだ足りない。恐らく、作中でリャンハが最も脅威と感じていた男が、このホーなのではないかと私は考えています。
もう一人の主人公とも言うべきソン・リャンハが最も脅威に感じるほどの、ホーの脅威的な復讐心はどこからきていたのでしょうか。
引用 Fe/KADOKAWA
スンウ、という兄貴分のヤクザをリャンハに殺された、と先述していますが、ホーの復讐心を紐解くにはスンウというキャラクターに踏み込まざるを得ません。
このスンウというキャラクターは、時間軸上では1巻が始まる前までにリャンハに殺害されており、彼はリャンハの上司という立ち位置でした。
11巻にその経緯がまとめられており、三檮会(さんとうかい)のボスを含めた幹部18名を殺害した暗殺事件、ソン・リャンハが行ったものだと、10巻までは思われていたのですが……これ言っちゃうと、11巻の大きなネタバレになってしまうので明言は避けますが、こういう真実が隠されていた、とは思いませんでしたね。
作中で明言はされていませんが、状況的にそういうこと、なんですよねFe先生? 明言されていないので、この後、真実が私の考えている方向とは全然違う向きに転がる可能性も否定できませんが(汗)
ホーとリャンハの、共通の上司であるスンウに話を戻しましょう。
とある事件で、この三檮会(さんとうかい)のトップに目をかけられたリャンハは、スンウの下で働くようになります。
引用 Fe/KADOKAWA
もうこの頃からホーは、リャンハに対して警戒心を剥き出しにしています。何せ、初対面で『てめぇが襲撃の手引きしたっつー線もあるんじゃねえのか?』ですから。
まぁ、この襲撃の手引き云々が、リャンハが関係していたかはわかりませんが、ホーのこの警戒心そのものは大正解であり、三巻のオマケでホーが自己評価をしているページがちょいとだけあります。
『……俺は 頭は悪いっス……が 人を見る目は少し……たぶん あると思います あいつはどうしても信用できません』
もう悲しいくらいに正鵠を射た人物観察眼です、ホー君。真っ当な道に進んでいれば、その人物観察眼だけで、一門の人物に成り得たかもしれない、と思わずにはいられません。
ここでこの二人の共通の上司であるスンウは、リャンハが信用出来ない、という警告に、こう返答しています。
スンウ『人選の目なら俺も自信があるぞ』
ホー『真面目に言ってるんですっ!』
引用 Fe/KADOKAWA
スンウ『俺だって真面目に言ってんだよ だから俺はお前を拾ったんだよ』
3巻のオマケ漫画でのやり取りですが、3巻のFILE14で、掃きだめのような場所にいたホーがスンウに拾われ、色々と面倒を見て貰っていた描写が僅かにあります。
ホーからすると、自分を拾ってくれた恩人がスンウであり、リャンハは初対面から警戒していた相手。ホー同様、世話になった相手であるにもかかわらず、リャンハは恩人を殺した裏切者、という事になります。
死んでも殺すというホーの決意は、銃を前にしても前へ前へと進んだその復讐心の源は、ここにあったのでしょう……
ただ、これ、Fe先生が色々伏線仕込んでそうで、この人物模様がどう転がっていくのか、正直愉しみでもあるんですよね。
ホーから見ると、そういう人物模様になるんですが、11巻まででわかっている、ソン・リャンハの視点から見た人物模様はガラっと変わってしまいますので……11巻以降の情報があると、これもまた変わる可能性が高そうですし、これ、本当に少女漫画なんですかFe先生?
まぁ私は愉悦満載で愉しいので満足ですけど、愉悦愉悦♪(オイ)
殺し、殺されという復讐を体現したキャラクターであるホーですが、そんな彼の声を担当するのは前野智昭さん。
『よろしく言っといてくれよ 落とし前つけるときがきたぞ 裏切者』というホーの台詞が『殺し愛』の第一弾PVで放送されていますが、ドスの利かせ方が、殺すという決意が声に滲み出ていて、面と向かって言われた日にはもらしちゃいそうです(ガクガクブルブル)
ちなみに、一巻のオマケでは、言動に一番共感できるキャラと書かれているホーですので、リャンハに殺されるのは確定であっても、アニメではさらなる活躍を期待したいところです。