ドラマ化する正直不動産の神木涼真のキャスト(俳優)は誰?

営業経験者ならば、商品売れるまで帰ってくるな、と言われた経験はありませんでしょうか。あるいはノルマが達成出来ないと休日が一カ月で一日も取得できない、とか。

ヒドイ職場になると、死んでも売ってこい……

そもそも最初から「営業でノルマがあるからね」と言われて入社するならばまだしも、そんなノルマの存在など面談時には全く匂わせずに、採用した後はノルマが達成出来なければ休日の存在などなく、有給休暇などどこの異界の言語なのかという状況、という職場もありますからねえ(遠い目)

途中から過去の職場の愚痴になってしまいましたが、商品売れるまで帰ってくるな、死んでも売ってこい、を作品内で忠実に実行しているキャラクターが一名だけ存在しています。

私がミネルヴァ不動産の西岡の紹介時に大悪党と言った鵤聖也でしょうか? いえ、違います。彼はもっと悪い意味で合理的なので。

死んでも商品を売ってくるのは、神木涼真という名の男。第六巻の第47直タワーマンションの前編で初登場を果たした、ミネルヴァ不動産で恐らくはナンバーワンを張っている男。

と言っても、初当時はミネルヴァ不動産に所属していたわけではなく、メジャープロブレムとかいう雑誌を販売していました。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

うん、何故かわかりませんが、この正直不動産、初登場するキャラの設定が、時間の経過と共にブレていることが結構多い気がするんですよね。

桐山然り、瀬戸然り、藤原然り……そりゃ人だから成長もするし辺かもするから、転機となるエピソードを挟んで色々と変わっていくのはわかりますが、登坂社長に再度拾って貰った恩がある瀬戸さんの変化はわかるのですが……桐山と藤原はキャラの造形が甘い、と言うよりは初登場時のエピソードの作り方が雑、としか言いようが無い……

面白い作品だからこそ、キャラの作りで『えー、何それー?! こんなキャラが実在するなら、こういう対応にならないでしょう?』と言いたくなることが散見されるのがもったいない……

藤原と桐山のページで何度がブー垂れているんですけどね。

この神木、非常に良く筋が通ったキャラクター造形がなされており、悪魔的な営業手法を取る人物ではありますが、変化・成長』を経てこのような人格形成がなされたと丁寧に描写されているキャラなので、私は好感を持っています。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

うん、祠というか社というか、ぶっ壊してウソがつけなくなって正直営業をはじめた永瀬よりよほど好感がもてる(笑)

いや、現実にこんな営業さんに来られたら迷惑どころの話ではないんですがね。

だからこそ、初登場時に大通りの歩道で雑誌を売っていた、ところを鵤にスカウトされる、というのが ? となりましたね。

どうして私が ? と首を傾げるのか……神木涼真という人物の考察をしていくと同時に、説明をさせて頂こうと思います。

神木涼真39歳。雑誌を歩道で営業していた所を鵤聖也にスカウトされ、ミネルヴァ不動産に入社しますが、元々彼は登坂不動産に所属していた過去があります。

現在神木は39歳なんですが、12年前の回想シーンで、営業のアドバイスを求めてきた永瀬に、彼はこのように述べています。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

『全部ダメだ永瀬。それじゃあ成約が取れなくて当然だ。スーツ。靴。時計。髪形。表情―全部ダメだ。唯一正しいのは、ナンバー1の俺にアドバイスを求めたことくらいだ』と。

さらには、永瀬の回想で、過去に神木に営業成績で勝てたのはたったの一度、しかもその一回は、永瀬の親友が家を買ってくれたことによるもので、さらには神木はその月の半分をマカオで豪遊していた、とも述べております。

うーん、あんなシリアスな理由を持っている神木が、月の半分をマカオで豪遊して、ナンバーワンをかっさらわれる、というのは信じ難いですね……雑な作り、その一です。

第七巻の冒頭で、ミネルヴァ不動産の社員に、彼は

『俺は登坂不動産を辞め、不動産会社をいくつも渡り歩き―ナンバー1を取り続けた。そのためには何でもやった』

と述べており、成績が危うかった時に架空契約をでっち上げ、締め日を過ぎてナンバー1が確定したら即解約したんですが、それを当時勤めていたナンバー2の社員に密告され、上司に刑事事件にしない代わりに会社を去るよう言ってきたそうです。

色々な噂を流され、不動産業界にいられなくなった……まぁ、ここまでならば、ああそれで雑誌の営業をしていたのか、とわかるんですが、その後が余計です。

『外車とクルーザーのローン、タワマンの家賃は100万越え―あっと言う間に払えなくなり、気付けばホームレス。そこに現れたのが鵤社長だ』

……え?(困惑)

いやいやいや、後述する理由を持った人が、外車とクルーザーのローン、残しているかぁ? タワマンには何が何でもしがみついて住もうとするのは、拡張自我のことも話した後で『勘違いするな。金持ちだからタワマンに住むんじゃない。タワマンに住むから、金持ちになれるんだ。』と言っているので、タワマンには住み続けるでしょうね。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

それに、不動産の営業で長年ナンバーワンを張れた営業力があれば、不動産業界にいられなくなっても、高級商材を売る業界に転職してお金の都合つけるでしょう普通は。

教材の営業なら月200万の収入はいけますし(実話。もちろん私はそんな売れる訳がない)、外車の販売だってフルコミならもっと稼げるでしょう。

つまり、あんなよくわからん雑誌を売っている最中に鵤にスカウトされる、というのが雑な作りその二ですね。

この二点が、二点が非常に惜しい……これさえなければ永瀬と販売手法から信念、ありとあらゆることが対照的な、素晴らしい宿敵キャラなのに……

あ、古参のはずの大河部長も彼の過去を知らず、神木がナンバーワンになってから入社してきた、ということには、矛盾を感じません。

後述の理由があるので、部長などの管理職になり、現場に出れないことでナンバー1になれなくなることを避けるため、ということでしょうから。

神木がナンバー1を取り続けても、出世していなかったことは理解出来ますし、共感出来ますね。

うん、好きなキャラクターのことであればドンドン書けるね、書き始めてまだ一時間経っていないし、書きたい事柄も結構あるのに、もう2500字を越えている。

この神木、ナンバー1になっているだけあって、身だしなみの重要性、第一印象の9割は見た目を方ある、拡張自我によるタワマンの話、レストラン内で客の視線がある中、タップダンスを踊りながらミラーリングの理論を話し、『心臓の鼓動までシンクロさせられれば、家だろうがなんだろうが売れる』とまで言ってのける胆力は、当時の永瀬をして『い……いかれてやがる、こいつ』と言わしめるほど。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

しかし、彼の教えを半信半疑ながらも実践した永瀬はナンバー2にまで営業成績を向上させたのですから、ただ単純に『いかれている』訳ではないのです。

何せ、営業をする時は『人は心臓がある左に立たれると圧迫感を感じる。だから、声をかける時は右側から。2秒間、最高の笑顔で微笑みかけろ。話しかける際の質問は、「はい」「いいえ」で答えられる、クローズドクエスチョンではなく、会話が展開するオープンクエスチョン』

などと、もう考えられることを考え尽くして営業を仕掛けています。

さらには、神木と再会した永瀬は違和感を覚えますが、それもそのはず。神木は整形手術をして、本物の作り笑いを手に入れていたのです。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

『相変わらず、いかれてやがる』と内心で永瀬が思ってしまうのも無理からぬこと。

しかし、彼の『いかれてやがる』のは、このエピソードではまだまだ序の口。

客を奪う目的で、永瀬の旧友であった若村夫妻に、フラット35を活用してとある不動産の購入を促しますが、投資目的でのフラット35は融資契約違反。

それに気付いた永瀬が彼のもとに怒鳴り込みますが、神木は微笑んでコーヒーを飲みながらスマホで電話番号を押しつつ、こう語り掛けるのです。

『たしかに、表沙汰になったら大打撃だ。だけど、若村さんはミネルヴァ以上の致命傷を負うだろうな。融資金額の一括返済を求められ、夫婦で路頭に迷う。

 永瀬、ここ最近のおまえの評判、俺の耳にも入ってるぞ。正直な営業でぐグングン成績を伸ばしているらしいな。

 素晴らしい――腐敗した不動産業界に現れた正義のヒーローだ。』

そう言って、通話先と繋がったスマホを永瀬に手渡し、告げます。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

『さぁ、ヒーロー。住宅金融支援機構に不正を見つけたと報告しろ』

ウソがつけなくなった永瀬は文字通り必死に口を噤み、どうにかスマホを切ることに成功しますが、何も出来ない永瀬はせめてもの抵抗にと、地獄に落ちろと悪態をつきますが、ここでも神木が一枚上手。

『その程度の覚悟がないと思ったか? 地獄で上等だ。地獄の住人にタワマンを売りつけてやるよ。』

これは、ナンバー1をずっと取り続ける人間だわ、と背筋に冷たいものが流れましたね、読んだ当時は。

ここまで覚悟をもって営業できたこと、私は一度もないですもの。

では、何故神木涼真は、地獄に落ちる覚悟をもって営業を続け、ナンバー1を取り続けるのか。

登坂不動産に入社した頃の神木は、人見知りで口下手、ノルマを達成できるかどうかの瀬戸際にたたされる、営業に向いていない人材、と評されています。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

神木は元々介護の仕事をしていましたが、生まれてきた4歳になる子どもの学費を工面するため、成果報酬を期待できる登坂不動産に転職しました。

この回想では、彼がタップダンスを行うのが、息子がダンスに興味を持っていたために、タップダンス教室に通い出したものの、息子がやりたがっていたのはヒップホップダンスであること、息子が運動会の徒競走で転んで一番を取れなかったことで落ち込んでいることが描写されています。

『だったら、来年1番になればいいじゃないか』と呼びかける彼は、良い父親にしか見えません。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

一年後の運動会で、仕事の関係で有給休暇が申請できなかった彼は、朝会だけ出たら営業で抜け出す、と徒競走で1番を目指す息子と指切りをして会社に向かいます。

時間通りどころか、運動会の開会式にも間に合う余裕をもって息子の通う幼稚園に向かう神木ですが、途中、交通事故の現場に立ち合います。

そこで、見覚えのある弁当箱を見かけた群衆を掻き分け、妻と息子を探しますが、すでに二人は亡くなっていました……

『……俺のせいだ。俺が一緒だったら――』

その場に崩れ落ちる神木……

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

二人の葬式に出席した登坂社長は、落ち着くまでしばらく休めと、妻子を喪った神木を気遣いますが、

『登坂社長、お気遣いありがとうございます。でも、明日から出社します。この子との約束があるんで』

と、神木は死んでしまった息子さんが、そこにいるかのように、幻に対して頭を撫で始めるのです。

『翔太。パパが頑張ったら、1番になれることを証明するからな。なんでパパ、もっと早く本気にならなかったんだろうな? ごめんな香織、おまえの言う通りだよ。翔太に、1番になれるって言うなら、まずは俺が1番にならないとな。』

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

妻子を喪って二カ月後、神木はナンバー1になります。

そして、一度だけ永瀬にトップを譲った自分を許せず、神木は登坂不動産を去ったと登坂社長は語るのですが……

どうですか? こんな凄まじい過去を持つ人間が、半月マカオで豪遊して、油断して永瀬にナンバー1をかっさらわれる?

神木は他にもこんなエピソードもあります。

物件の立ち退きをさせるため、ソバアレルギーがあるにもかかわらず、出されたソバを食べ切ったら立ち退きの話を受けると言いだした、実に性根の悪い客がいたのですが……

『食べ終えたら、本当に交渉のテーブルについて頂けるんですよね?』

と確認をとり、ソバを食べ始めるのです。

最初は神木が、ソバアレルギーだとウソを言っていたのだから、こちらも立ち退きの話はウソだったことにする、と言うのですが、神木は本当にソバアレルギーで、顔色は真っ青で、ソバを口にしてから脂汗を流し始めます。

慌てて救急車を呼ぼうとする客に対し、

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

『いやだな鴨川さん、病院なんて行きませんよ。だって、まだ食事中です。食べ終えたら、立ち退きの話をする約束じゃないですか』

と文字通り、必死になってソバを掻き込む神木。

神木の条件で立ち退くことを約束されたことで、ようやく神木はそばを食べるのを止め、

『これで今月も、私がナンバー1です』と言って倒れる……

どうです? 文字通り、命懸けで営業している人間が、半月マカオで豪遊して、油断して永瀬にナンバー1をかっさらわれる?

いやぁ、説得力皆無でしょう。

私には想像出来ませんよ、神木がそんな理由でナンバー1を奪われたことが。

もっと適切な理由でナンバー1を奪われたことにして下さいよ。

普通に、永瀬が親友に物件を買って貰ったから、その月はたまたま僅差でナンバー1になれた、で良いじゃないですか。

それであれば、ナンバー1になれなかった己を許せず退社した、という部分も納得できますよ。

ナンバー1を取る動機が、死んだ息子との約束という、大多数の営業とは違うモノなんですから、自分を許せなくて退社、というのも理解できます。

引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館

それなのに、マカオで半月豪遊して、ナンバー1を一度だけ取られたというこの設定……神木涼真というキャラを冒涜している、雑な作りだと私は思うんですよね。

好感を持てるキャラだからこそ、こんな雑な作りをされると非常に腹が立ちます。

是非、是非、ドラマ版ではここの設定の改変をお願いしたいと、私は切実に願っています。

さて、そんな永瀬のアンチテーゼとも言うべき、神木涼真を演じる俳優さんは誰が適役なのか。

松山ケンイチさんならば、彼のこれまでのエピソードを考えると、神木涼真になりきってくれるのでは、と個人的に期待しています。

映画『NANA』に出演時、役柄上ベースを一晩で一通り弾きこなせるよう練習したこと然り、映画『GANTZ』の役作りでは体重を7kg減量し、逆に映画『聖の青春』の場合は20kg増量したこと然り。

松山さんならしっかり役を作り込んで、客に最高の印象を与える作り笑顔を浮かべてくれるでしょう。

もっとも、最高の好印象、ではなく、最高の悪印象、かもしれませんが……神木ならば最高の悪印象をもたらす笑顔も作れるでしょうし。

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