主人公、というものが作品内に存在するならば、ライバル、好敵手という存在は大概のドラマには存在するものです。
この『正直不動産』という作品で永瀬財地が主人公なのは疑いようがありませんが、ライバル、好敵手となると誰が該当するのか。
鵤(いかるが)聖人は、永瀬財地のライバル、というよりは社長である登坂寿郞のライバル……いや、宿敵とか好敵手とかいう、好意的な存在じゃないよな、アレは。怨敵とかそんな感じだよな、相手の存在を許せん、という感じの(怖) 永瀬的にはラスボス、諸悪の根源、って感じだろうけど。
では、永瀬のライバル、宿敵、という感じのキャラクターが誰、と問われると、私は桐山貴久を挙げましょう。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
いや、黒須も宿敵、ライバルって感じなんですけどね……黒須はどちらかと言うと戦友、の表現が合っているかと思いまして。
話が逸れかけているんで、個人的に永瀬のライバル、宿敵と考えている桐山の考察に移りましょう。
桐山は第3直 囲い込み(前編)で初登場をしております。
しかし、初登場の桐山、何ともあくどい方法で永瀬から客を奪っているんですよねぇ。
バックグラウンドがしっかりしているキャラクターだから、二巻のお話しで桐山がやったことは、正直腑に落ちないところがあるんですよね……
永瀬が最初に説明していた時には、契約には『専属専任媒介契約』『専任媒介契約』『一般媒介契約』の三つの形があることを説明しています。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
ちなみに永瀬は、【嘘がつけるなら、『お勧めは専属専任媒介契約だ』と断言しており、お客さんの事情を聞きながら、嘘がつけなくなった永瀬は『一般媒介契約』を勧めています。
もっとも、
『俺が上司なら、一般媒介契約なんかを勧める社員がいたら、即刻クビにしてるぜ』
と考えており―この辺りの手数料が絡んだ豆知識は、別途記事を書いてまとめようと思います。
この契約のための話をしている最中に永瀬あてに、至急お話ししたいと電話がかかってきたため、永瀬は通りがかった桐山にマンション売却までの大まかな流れの説明を頼みます。
すると、彼はお客さんをその口車で見事に意見を翻意させてしまい『専任媒介契約』『専属専任媒介契約』での契約を締結させるだけではなく、担当を永瀬から桐山にすることも承知させてしまいます。
桐山は買い手も自分で探し出し、売り手と買い手、両者から手数料をもらう『両手』を行うことで利益を倍にした訳です。
そうすると、当然のことながら得するのは不動産会社であり、客は損するだけ。
もっとも、桐山にも言い分はありまして『通りかかったら一般媒介契約を勧めてるのが聞こえたですもん。俺が上司だったらあなたをクビにしてますよ』と言っており、月下からの『少しでも高く売りたいご夫婦のためになりません』という反論にも『いいか、よく考えろよ。おまえは、客のためなら会社が損してもいいと言ってるんだぞ。つまり、会社への背信行為だ】
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
この指摘、間違ってはいないんですよねぇ……だから月下もまともな反論を桐山に出来なかったわけですし、永瀬自身も内心で『俺が上司なら、一般媒介契約なんかを勧める社員がいたら、即刻クビにしてるぜ』と考えている訳ですから。
本当に一巻は『原状復帰』にこの『契約』のお話しに、『おとり物件』と知っておかないと損する話題ばかり扱っていますからね。
……私が今のアパートに入居する前も、不動産会社に第一希望の物件を尋ねて調べて貰ったら、ありませんでしたからね(嗤)
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
(笑)じゃありませんよ、(嗤)です。多分、囮物件だったんでしょうなぁ……今となっては確認する術なんかありませんが。
さて、話を桐山に戻しましょう。
私が先程書いた、【バックグラウンドがしっかりしているキャラクターだから、二巻のお話しで桐山がやったことは、正直腑に落ちないところがあるんですよね……】なんですが、2巻では永瀬と桐山が同じ土地の買い手を探す話がありまして、永瀬が探してきた買い手は1億4千万、桐山が探してきた買い手は1億5千万。
勝負は桐山の勝ちだったんですが……彼、会社に告げていた額は1億3千万なんです。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
これだけ見ると、小悪党という感じな桐山なんですが、土地の売主であるお婆ちゃんに、毎日お昼の散歩を一時間以上付き添っていたるんですよね。
さらには、桐山の父親は自殺してすでに故人。
桐山の父親の会社が、建設を請け負ったマンションの壁にヒビが入り傾いた事件があったのですが、桐山の父親はヒビが入ったマンション建設の二次下請けの現場責任者。
『工期の遅れを挽回しろ』という元請けからの指示でやむを得なかった、と当時の桐山にこぼしていましたが、マンションの欠陥が判明すると、販売元、元請けはトカゲの尻尾よろしく桐山の父親の会社に責任を押し付け、桐山の父親が所属する会社も、彼の父親を庇うことはしなかった、という過去があります。
『あれだけ会社に尽くした人を、会社は見捨てた』
『真面目な社員……父のような社員が笑って働ける不動産会社を作りたいんですよ』
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
と語る桐山が、お金を自分の懐に入れるようなコスイことをするのが、どうにも腑に落ちないんだよなぁ……これだけバックボーンしっかりしているキャラにあるまじき扱いと言うか……もうちょっと何とかならんかったんか、と脚本の水野さんにちょいと文句を言いたいレベル(怒)
そして二巻第13直の告知義務、という話で新たに加入する藤原結弦(ふじわらゆづる)の嫌がらせで、亡き父親の親友に事故物件を紹介してしまいます。
どうにか亡き父親の親友に誤解であることを理解して貰おうと、藤原に説明を頼んだのですが、『事件については桐山が説明したはずなんですが』と桐山に責任をなすり付けられたことで、桐山は社長に直談判を決意。
結果、桐山は登坂不動産をクビになります。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
これ以上藤原の下では働けないと直訴した桐山に対し、登坂社長は『だったら辞めろ』と告げるのです、営業成績ナンバー1であった桐山に対して、です。
『この業界で最大の武器は、情報と地主とのコネクションだ。藤原にはコネがある。おまえには何がある? おまえと藤原、どちらか選べと言われたら……迷わず、藤原を選ぶ』と告げられ、彼は退社に至ります。
これが4巻で再登場した時には、ぶっ飛びましたね……多分、ここもドラマ化されると思うので詳細は語りませんが、登坂寿郞の数少ない失点の一つは、藤原を選んで、桐山を選ばなかったことでしょう。
もっとも、桐山を選んでいたらここまで驚異的な成長を桐山が遂げることはなかったかもしれないので、一概に失点と言いきれないのですが……
4巻の第24直で永瀬はこう回想しています。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
『どこかでライバルだと思っていた男が、知らないうちに、背中も見えないほど遠くを走っていた』と。
さらに、永瀬が地面師にひっかかりそうになった話では、桐山に助言を求めたのですが、彼はすぐに手を引いており、永瀬より能力が一枚、二枚上手であることをさりげなく見せているシーンもあります。
『似合わないスーツを着た人たちとは仕事をしたくない』
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
うーん、渋い一言です。
そんな桐山貴久を演じるとすれば、ふさわしいキャストはどなたなのか。
永瀬役が山下智久さんですから、同年代くらいの若手俳優がふさわしいでしょう。
山田孝之さんはどうでしょう? 闇金ウシジマくんのシリーズで、丑嶋馨役をこなした胆力が活きるのではないかと思うんですよね。
最初は色々と慌てるシーンが多い桐山ですが、再登場してからの桐山は、登坂社長に真正面から一撃食らわせた数少ないキャラクターですからね。
桐山のキャストを予想してみましたが、私はテレビを持っていない、とこれまで何度か語っている通り、最近の情報に疎いんでネット頼みなんですよね、俳優さんの情報を調べるのは。
アニメの声優でさえ予想、全敗に近い状態なんで、楽しみながら調べている、というのが実情ですね(笑)
追伸 桐山貴久の俳優さんは、市原隼人さんに決定いたしました。
んー、山田さんを推したものの、市原さんも確かに桐山の雰囲気が漂っている……期待できるキャストですな。