営業経験者であれば、成績優秀な後輩が入社してくると、焦ったりしませんか? 個人的には非常に焦ります、上司からの圧力が体感2割増しにはなるので(汗)
3巻の第19直【預り金】の前編に初登場する西岡も、登坂不動産に中途で入社した社員。ニコニコと微笑みながら、軽妙なトークを駆使し、入社して一週間で成約を三件取っています。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
……うん、成績自体は優秀だと当初は表現されていたんだよな、西岡。
登坂不動産に入社する前はBFF不動産(ベストフレンドフォーエバー不動産)に勤めていた社員でして、月下から見ると、お客さんの要望をちゃんと聞いてくれる、カスタマーファーストな営業さんに見えるようです。
しかし、ベストフレンドフォーエバー不動産……もう少し、こう、名前何とかならんかったんですかね? いかにも胡散臭い、と言うかリアルにこんな名前の不動産屋があったら、私は絶対この不動産屋からは紹介受けませんね……もしかして鵤さん、不動産屋の名前をミネルヴァにしたのは大正解だと思いますよ、マジで(汗)
さて、話を西岡に戻しましょう。
西岡の立ち居振る舞いは、外面は非常に良いんですよね。日常生活でもよく見受けられることですが、ニコニコと人当たりよく、自分の話を聞いてくれる人だと、良い人だと判断してしまいがちです。
なのに、裏でめちゃくちゃ人の罵詈雑言を言っている、というタイプの人は社会に出ると……いや、違うな、学生時代からクラスメイトもそうだけど、教師もそうだったなぁ(汗)
閑話休題
西岡のニコニコとした聞き上手接客ですが、ベテランの永瀬からすると、違う見解が述べられまして、客を福沢諭吉だと思ってるタイプ、と言い切っています。
会話のテクニックがうまいんですよね、成績優秀な営業さんって。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
予算が10万円のお客さんに(リッチ、すげぇリッチだ、家賃に10万!)『少しだけ予算をオーバーしてしまいますが』と断りを入れて、11万の物件を紹介。
ただし、西岡は最初に『相場は13万に近い』と告げており、これが心理学的にはアンカー効果が働くのです。
アンカー効果とは、最初に提示された数字や条件が基準となることで、その後の判断が無意識に左右されてしまう効果のことです。
……経験ありますねえ、関東に初めて出てきた時のアパート探し、西岡と同じように最初に相場言われて、ちょっとだけその基準より低いところ、告げられましたねえ。
もっとも、私は最初からガンとして金銭的な条件も、地理的な条件も動かさずに、「いえ、予算は6万なので6万以内で、〇〇地区の物件をお願いします。譲れない条件です」と告げて探しましたけど(笑)
他にも先にデメリットを口にし、後からメリットを言うのも営業の常套手段の一つですね。
ただ、永瀬は心理学的にも後から説明されたことの方が、記憶に残りやすい、と説明していますが、これには私、異議あり。
確かに記憶には残りやすいですが、初頭効果のことは考えていないんでしょうか。
「初頭効果」とは、先に得た印象が判断基準になることを言います。
第一印象と似たような感じですかね。
この初頭効果をもとにして考えると、先にデメリットを話すと、後からメリットを話しても「基本的にダメ」が基準になってしまうのでは、という疑問があるんだけど、永瀬さんその辺どうなの?
まぁ、こういう意地悪な重箱のスミを突くような質問はこのくらいにしておきましょう。
西岡に話を戻しますが……キツネ目のキャラはどうしてこんな怪しそうに見えてしまうのだろう? 『殺し愛』のソン・リャンハは初っ端から怪しく見えたし、FGOの太公望なんていつオベロンのように裏切るかと私は常にヒヤヒヤしていました……お前、プリテンダーなんだろ? って感じで(汗)
眼を開いた西岡は普通にあくどいことを平然と言います。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
『営業成績を上げるコツ、教えてあげますよ。取れるところから、取れるだけ毟り取る。誰かが損をするから、誰かが得をするんです』
この西岡、売り上げを上げることが存在意義と言い切る、フルコミの黒須と似ている印象があるかもしれませんが、黒須はあくどいセールスはしても、信義にもとるようなことはしません。
しかし、西岡は、登坂不動産の看板で私服を肥やす、キックバックを行って、業界慣習と言っているのですから、グレーなこともやるとはいえ、腕一本、己の力のみで売り上げを叩き出している黒須とは悪い意味で違います。
登坂寿郎の最も嫌う、客の信頼を陰で裏切る行為をした西岡は登坂不動産をクビに。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
結果、ベストフレンドフォーエバー不動産の社長であった、鵤聖人が立ち上げたミネルヴァ不動産に入社し、永瀬に逆恨みしているんだからどうしようもない。
いや、瀬戸健一課長は、まぁ永瀬のせいと言えなくもないので、彼に恨み、とまでは言いませんが嫌いになる理由はわかるんですけどね。
それでも瀬戸さんは永瀬を二度も助けているんだから、根は良い人なんだろうなぁ……
まぁ、この瀬戸さんも西岡と一緒になって、欠陥住宅を月下のお義父さんに売ろうとしていることがあるから……ノルマとか、お金がかかると、誰でも人が変わっちゃうからなぁ。
人は霞を食べて生きていけない……ということか。
しかも10巻では菅沼が紹介してお客さんに売った物件の手前の道路を、西岡がミネルヴァ不動産名義で購入したため、通行地役権を盾に、通りたければ月5万払えという無理難題を突き付けます。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
いやぁ、ここまでダーティームーブかますと、これはこれで小物としての立ち位置がしっかり確立されていますな(汗)
しかし、これも小心者の菅沼が、月五万は無理でも、一万くらいならと、払いそうになっていたところを、ウソがつけなくなった永瀬が通りかかったことで悪徳不動産屋、小悪党、呼ばわりされる始末。
さらには菅沼がある機転を利かせたことで、西岡の通行地役権を盾にした請求を、無効化されてしまい、ハッキリ言っていいとこありません。
鵤のような大悪党にもなりきれない小悪党、まぁ漫画として見ている分には非常にカッコ悪い訳ですが、そんな西岡は、自分の今の現状をどう思っているのか。
永瀬に、とある件で会った際に『変わるなら、今しかないんじゃないか?』と告げられますが、その際に告げた西岡の台詞は実に悲しい。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
『なりたくてショッカーになったとでも思ってんのかよ』
鵤聖人のような、良心の欠片もない大悪党にはなれないし、地獄に落ちろと永瀬に罵倒された際、地獄の住人にタワマン売るとまで言い切って切り返した、文字通り命懸けで家を売る神木涼真、女性の地位向上のために使命感を胸に営業を行う花澤涼子……
ショッカーに例えるなら、鵤が首領で、神木がナンバーツー、花澤は新進気鋭の怪人……なのに西岡は名も知れぬモブの戦闘員、という立場でしょうか。
しかも西岡だけ下の名前、未だに出てこないし(泣)
しかし、あれだけ平気でお客さんにウソだろうが何だろうがペラペラと喋れる西岡が、あがり症で就活の面接にことごとく失敗していた、という過去はちょっと信じ難いですね。
しかも大学が明時大学(誤字にあらず)なので、多分明治をイメージしていると思いますが、良い大学出ているのに、どうしてベストフレンドフォーエバーなんて、明らかにヤバそうな名前の不動産屋に、新卒で就職するんだ……
まぁ、就職氷河期で全然就職先なくて、名前だけ衣替えした中央出版系列の営業として新卒で入った私に言える台詞ではありませんが(実話です)
今みたくちゃんとネットあったら、しっかり調べて絶対入社しなかっただろうに、あんなブラックなところ……
西岡に話を戻しますが、そんなショッカーを自認する彼は、単なるモブではありません。
永瀬に一矢報いる話が、11巻にあるんですよ。
MY MAN(マイ メン)と呼ぶラップおばさんの回で、西岡はショッカーの意地を見せます。
これはドラマ化して欲しいんですが、11巻まで話が進む可能性は低いでしょうから、正直不動産のドラマに人気が出て、第二期の放送で期待したいところ。
さて、ショッカーこと西岡の俳優は誰が担当するのか、の予想ですが、外面は良くて、しかし内面は小狡く、しかし鵤のような大悪党ではなく、神木のような覚悟も、花澤のような使命感も無い。
うん、悲しいまでにショッカーだよ、西岡……
野村周平さんはどうですかね? 外見のイメージが何となく西岡に似ていますし……野村さんと言えば、ツイッターでの炎上騒動が何度かありました。
あの騒動での対応とか、西岡がラップおばさんに語っている台詞を、野村周平さんにそのまま贈っても……良いくらいピッタリだと思うから、という理由もあります。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
『責められれば責められるほど意固地になってしまう。生き方ってのは、そう簡単に変えられるもんじゃないよな。』
深い。西岡、そのくらい素直になれたら、わざわざミネルヴァ不動産で営業しなくたって良かったろうに……(泣)