前回のめちゃくちゃ怖い黒スーツの『私の負けです、私の負けです、私の負けです、私の負けです、私の負けです、私の負けです』とは打って変わった、ビスコにパウー、ジャビで鍋を囲んでいる所に、ミロが走ってやってくる、というシーン……でも、いくら走っても走っても、三人は遠ざかっていく……
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
ああ、こういう時、原作知っていると、ミロが走り出す前から、彼が寝込んで見ている夢なんだろうなぁ、と察してしまえるのはちょいといばかり残念。
しかし、それにしても前回から声優さんの演技力に関心しっぱなしです。
猪突猛進という四文字熟語が多分、2022年のアニメの中で最も似合うキャラクターであるビスコが、こんな優し気な声を出すとは……と前回からスゲェと思っているのに、ビスコがミロを助けるために、たった一つだけ残っていた錆喰いのアンプルを打つ前に、『ビスコが作ったの?』とミロが問いかけるんですが、それに答えたビスコの回答が、『お前が書いてくれた調合式が役に立った』と、声のトーンがほんの少しだけ変わるんですよね。
視聴者に、眼が見えないミロを助けるために、ウソを言っている、と悟らせる鈴木峻太さんの演出なんでしょうが、さりげなく声色を変えているとこが、うん、いいなと思いました。
この後は、ちょいとお笑いのシーンを挟んで、ミロからの、パウーと付き合わないの発言から、ビスコの鬼子母神、ミロの愛が重い、と言った諸々の発言がしっかり収録され、ほんのちょっとだけお笑いタイムが入ります。
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
原作ではミロが『僕ら、相棒、だよね。二人なら、どこへでも行けるし……何にでも勝てる、そういう、二人だよね』という問いを発すると『そうだ』とビスコは短く応え、『相棒は、ずっと一緒? 死ぬときも?』もという問いにも、短く『そうだ』とすぐに応えているんですよね。
が、アニメ版ではミロの発言は『僕ら、相棒、だよね。二人なら、どこへでも行けるし……何にでも勝てる』と短縮されてますが、『そうだ』と短くビスコが応えるのはほぼ原作通りと言って良いでしょう。ですが、二度目の『相棒は、ずっと一緒?』というミロの問いに、ビスコは即座に『そうだ』と応えるのですが、
原作では一括されていた質問を分離した『死ぬときも?』というミロの問いには、一拍の間を置いて『……そうだ』と応えたのも、ビスコは先に死ぬ覚悟をこの時点で固めていることを視聴者に訴える、鈴木峻太さんの良い演出だったと思います。
ちなみにこのやりとりをしている時、ビスコの表情は一切映していないんですよね……どういう顔をしていたのか、視聴者に想像してもらおう、と考えたのかな……
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
アクタガワと共に黒革の元へ赴くビスコは、『アクタガワ、俺、友達ができたんだよ。友達が……』というのは、原作でもあるシーンなんですが、映像化されて、鈴木峻太さんの声で告げられると、中々胸にくるものがありました。
原作には無い、アニメオリジナルになるパウーのシーンを挟んで、今日もやってきたブラックスキンタイム……いや、ブラックスキンタイムも好きなんですけど、鈴木峻太さんと花江夏樹さんの感動的な演技の後では、こういうドロドロしたのはちょいとご遠慮願いたい、と言うかもう前回でお腹いっぱいだよ黒革ぁ……
なので今日の個人的なお笑い枠について語ろうかな。
今回の第九話での個人的なお笑い枠はジャビ。
『なぁ、疑問に思わないのか? 何故あんたを……その、殺さないのか』という黒革の発言に、ジャビはいつもの調子でこう答えました。
『今日が、敬老の日だからじゃ』
うん、この発言は実に良い。状況を考えると、個人的には名言かなと思っています。
しかし、これほど豪胆なジャビが、テツジンの炉から錆を人工的に生産し、錆び風を吹かせていたことが判明した時には、『ばかな……こんな……!』と絶句したシーンとの対比は、実によくできているなぁと感心してしまいます。
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
唯一のお笑い枠も、次にやってくるシーンへの布石になってくるんだから、瘤久保慎二さん、一巻の錆喰いビスコの展開はかなり練りに練ったんだろう形跡がそこかしこに伺えるんですよね、こうやってアニメ化するとそれがよくわかります。
ここから先は、イミー君に紛れてジャビを救出する機会を伺っていたビスコの舞台なんですが……
ビスコが錆に侵されてしまった身体を見たジャビが、『ばかな、こんな、こんな身体で……!』という齋藤士郎さんの声は、多分『錆喰いビスコ』のジャビが発言した台詞の中で、一番苦しそうな声に聞こえたのは、やはり声優さんの底力。
ここ数話、声優さんの演技力が凄まじいことが素人でもわかる展開なので、見応え、聞き応えは充分。
黒革VSビスコのシーンでも、
『ガタガタ震えてるぜぇ膝がよぉ!』と叫ぶビスコのシーンは、どちらが悪党なのかわからなくなるくらいの迫力。
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
しかし、原作ではここ、黒革VSビスコでずっと続くんですよね。軍用蜂にイミ―君、アニメではなんかようわからんマッチョの奴まで出てますが……アニメではジャビやパウーのシーンも挟まれていますね。
いや、ここでパウーの相手にゴリラを出したのは、原作でビスコにパウーが『メスゴリラ』と言われたからでしょうか(汗)
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
ジャビも汗流して『なんちゅうバカ力……』と半ば呆然とした調子で言っていますね。
まぁ、ここもお笑い枠なのかもしれませんが、ここで笑うとパウーに夢で棍棒で殴り殺されそうなんで、ここでちゃんと、大いに笑ったとしっかり書いておきましょう(オイ)
肝心の黒革VSビスコのバトルは、原作を知らない方であれば、ビスコがあれだけの重傷を負っていたのに、黒革がビスコの威圧感に敗北して一方的な展開になったことを疑問視するかもしれませんが、原作でも、ビスコと黒革のバトルは、ほぼ一方的な描写になっていますからね。
多分、瘤久保慎二先生は、ビスコの威圧感を演出したかったんでしょうが、ここは正直私も原作を読んでいる時から、うーんと首を捻ってしまった所なので……もう少し、黒革のしぶとさ、図太さを演出して欲しかったですなぁ。
ただ、黒革じゃなくて、津田健次郎さんの執念は凄かった……ビスコに錆びの海に叩き込まれた後の、もがきながら喋るあの黒革……
原作では、
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
『あかぼし……! あかぼしぃぃぃ……! お前を、殺すんだ、オレは……! キノコ守りを、殺して。お前を殺して……。すきなだけ、眠るんだ……』
とあるんですが……うん、アニメで声が添えられると、あそこまで人の感情というものは表現できるものなのかと恐れ入るレベルでした、津田健次郎さん……
まぁ、ネタバレ有りって書いているから多少は次話のことも触れてもOKでしょう……津田健次郎さんの執念はしっかり見せてもらいましたが、黒革本人のしぶとさ、執念は次話で存分に出てきますから、楽しみに待っています。
そして、ビスコが某ターミネーターをイメージしたと思われる、錆びの海に沈んでいくシーンは、中々に見応えがありました。
ミロに呼びかけるビスコの声が、いつになく澄んだ声になっているのも、鈴木峻太さんの演出なのでしょう。
引用 錆喰いビスコ/電撃文庫 錆喰いビスコ製作委員会
しかし、こういう終わり方になるのであれば、第八話のナレーションがビスコになったのは納得。何より、『俺は、俺が何者か、わかった。アンタはどうだ? 次回、きみを愛してる』といつになく短い台詞でナレーションを終えたのも、第八話の展開を暗示していたが故なのでしょう。
そのため、最後はあのやたらビスコのコブシのきいた歌は無しで、悲壮な音楽で締めくくられた後は、パウーによる次回予告。
『星の一つ欠け落ち、ポカリと穴の開いた空。赤き輝きは失われたのか。否っ! 太陽の鏃は我等の心に突き立ち、今なお赤く燃える也。次回、復活のテツジン。キノコの神よ、照覧あれ!』
うーん、ラストに迫ってきていますね。
ここから先は、ミロの演技を花江夏樹さんがどう変えるのかに注目して、まずは次回の『復活のテツジン』の放送を待ちたいと思います。
いやぁ、欲を言えば、原作を知らない状態でアニメ、視聴して見たかったなぁ……
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