『錆喰いビスコ』のもう一人の主人公と言っても良い存在であり、主人公ビスコの相棒でもある猫柳ミロ。
ビスコが昨日まとめた通り、豪快、強引、獰猛な人物であるため、ブレーキを踏んでくれる存在は非常に有難いんですよ。
本当に、有る事が難しいと書いて、有難い存在なんですよ、ミロは。
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
だってビスコの人となりを今一度思い出してみて下さい。
目線だけでハエぐらい落としそうだと言わしめる凶悪な視線。
一目見て危険人物とわかる、狂犬じみた顔。
作中の動物兵器であるエスカルゴ空機(爆撃機みたいなものとイメージして下さい)を、弓矢で撃ち落とす、でたらめな膂力と技術。
師匠のジャビを助けるためとはいえ、初めて会った医者のミロに対して『つべこべ言ったら、悪いけど、殺すぞ』
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
いや、それ悪いと思っていないように思えますけど、ビスコさん、いかがです?(汗)
さて、こんな豪快かつ強引、獰猛な人物が赤星ビスコです。
半端なブレーキ役だったら、ブレーキごと踏み抜かれてぶっ壊れること請け合いです。
こんなふうに書いていると、猫柳ミロとはどういう人物なのか、ビスコ以上に豪快で強引、獰猛な人物だったりしないよな、類は友を呼ぶと言いますし……
猫柳ミロ、地の文では年齢が十六、七とあります。
女と見紛う風貌、と記されている通り、円らな藍色の瞳、白い肌に絹糸のように柔い空色の髪に細い身体とくれば、女性? と思われてもしょうがないかと。
ただ、左目に黒い痣があり、これが彼をパンダのように思わせてしまうんですよね。この痣もあって、彼は下町の皆から『パンダ先生』と呼ばれております。
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
彼には猫柳パウーという、姉と言う名の女傑が存在するのですが、彼女のこともまとめ出すとまぁ結構な分量になるので、姉が一人ミロにはいるよ、ということで。
この姉が、『錆喰いビスコ』の舞台装置の一つである『錆び風』、あらゆるものを錆び付かせるソレにおかされてしまい、命の危機にあります。
主人公である赤星ビスコの師匠、ジャビも同じく錆びにおかされており、相棒と同じ立場にある訳ですね。
ビスコは、あらゆる錆びを浄化すると言われるキノコ『錆喰い』の発見することが目的であり、一方のミロの目的は姉の治療であり、そのために様々な調剤実験を行い、果てには。錆喰いビスコの世界では、一般的に錆びの原因であるとされているキノコを用いた調剤まで行っています。
柔軟な思考、と評すべきか、恐れ知らずと言うべきかは、評価が分かれるところかもしれませんが、姉が余命幾許も無いという状況下であれば、どんな可能性でも試したくなるのが人情というものでしょうし、ましてやミロは自身が医者な訳ですから、考えられる限りの手を打ちたいと思うでしょう。
この調剤中に、傷ついた師匠のジャビを救うべく下町に忍び込んできたビスコと邂逅する訳ですが、この出会いも二人の性格をよく表しているエピソードになっています。
師匠のジャビを救うために『つべこべ言ったら、悪いけど、殺すぞ』とビスコの強引さが、悪い面で出てしまっています。
しかも指名手配されている凶悪犯が、極悪極まりない面構えで言うんですから、恐ろしい何て言うモノじゃないでしょう。
実際、最初は震えていたのですが、どっこい、そこは肝の据わったお医者様。
ビスコの背後に別の存在の臭いを嗅ぎ取ったミロは、投薬だけで治そうなんて考えが甘いと、ビスコを一喝。
ただ、まぁビスコも師匠が生きるか死ぬかの瀬戸際だったため、つべこべ言ったら、殺すと言ったよな、と再度脅しつけるように言うんですが、これに対するミロの切り返しが奮ってます。
『殺されるまで言います。そのままじゃ、そのお爺さんが、死にます!』
逆にビスコの方が目を身開いて驚いてしまいますからね。
さらには、忌浜県の特務部隊らしきものが踏み込んで銃撃された際には、ビスコはミロと示し合わせて人質にとっているかのような発言をしますが、あの黒革の手先が人質ごときで止まる訳ないよなぁ(汗)
これに対しビスコは、相手が迷い無しで撃ってきたことに『医者のくせに、人望のねえ奴だな』と言っているんですが、それに対するミロの反応はと言うと、しょげて俯いているんですよね。銃撃されているのに余裕あるなミロ、と思ったのは私だけでしょうか? いや、銃撃されているのに調剤機は抱きかかえているので、本当に多少の余裕はあったのかも。
逃走している最中にもこのままでは包囲されてしまうと、ビスコは陽動のために打って出ようとしますが、ミロはこれまでの戦闘で怪我だらけのビスコを睨み付けてしまいますから。
飛んでるハエくらいなら落ちそう、という凶悪犯を真正面から睨み付ける訳ですから、胆力は相当なもの。先程も書きましたが、豪快、強引、獰猛という単語が服着て歩いているようなビスコが、怯んでしまうレベルなんですから。
ビスコもそうなんですが、ミロの人となりもおわかり頂けたでしょうか?
豪快、強引、獰猛なビスコだからこそ、冷静で、時としてビスコ以上にでたらめなことを仕出かすミロだからこそ、ブレーキ役が務まると私は思うんですよね。
街の人々を無料で診療し、自分に襲いかかってきた子どもですら治療してあげる奉仕の精神性は尊いものですが、世紀末ヒャッハーの時代では、それだけでは生きていけませんからね(笑)
あと、蟹と会話することが出来ます。
『錆喰いビスコ』を読んだことが無い人には、突然何故蟹、と思われるかもしれませんが、この作品、前述したエスカルゴ空機のように、動物と機械を融合させた動物兵器というものが存在しますが、そういうものに混ざって、現代では考え難い動物と言うか、甲殻類も存在するんです。
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
ビスコの乗っているアクタガワ、という名称の蟹もそうでした、人を数人乗せるくらい簡単なデカさの蟹ですね。
このアクタガワ、当初はミロがその背中(?)に乗ろうとするとハサミで襟元を掴み上げ、ブン投げてしまうんですよ。
ビスコ曰く『お前だって、知らないカニが背中に乗ってきたら、ブン投げるだろ』まぁ、分からなくもない、かな?
とにかく、アクタガワが医者嫌いということもあってか、ミロが背中に乗ろうとしますが、何度も地面に放り出されてしまう始末。
しかし、こと医者の分野、治療となるとアクタガワ相手であっても全く怯みません。
医者嫌いのアクタガワは、ミロが治療のために色々な道具を取り出すと、気味悪かったんでしょうね、鋏を掲げて威嚇するんですが、あのビスコですらたじろぐ程の威容なんですよ。
ところがどっこい、治療のためであれば、ミロは少しも怯まないんですね。
最終的にはアクタガワは威嚇と警戒を解いて、ミロの治療を受け入れているんですが、これには長年アクタガワに乗っていたビスコが呆気に取られているほど。
『おまえ、これができるのに、なんで、背中に乗れないんだ?』と不思議そうな顔でミロを見ているくらいですから、ビスコですら出来ないことをやってのけたんでしょうね、ミロは。
予想の斜め上をいく、中々デタラメなことをしてくれる先生でしょ、ミロは?
さて、そんな猫柳ミロの声優は花江夏樹さんが担当されます。
PV用の動画を見てみましたが、優し気でありながら芯の通った声でして、あぁなるほど、猫柳ミロの声って、こんな感じなんだなぁと何故か納得してしまう、不思議な説得力を伴った声でした。
赤星ビスコの鈴木崚汰さんの声が、色々な特徴がピッタリとビスコのイメージに合致する、イメージ通りのものなら、猫柳ミロの花江夏樹さんの声は、イメージが色々と変わるのに、柔軟に変容するため、これもアリだな、と思うような感じなんですよね。
二人の掛け合いが今から楽しみです。