『錆喰いビスコ』の主人公であり、この物語の勢いと言うかパワーというか、そういったものをコイツ一人で半分以上は出しているんじゃないかと思う程、こう、荒々しいキャラクターです。
赤星ビスコ。身長180センチほど。年齢は十七。
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
髪の色は赤で、イメージ的には針金のように硬そうな髪質。額にはゴーグルが常備されており、精悍な顔立ち、というには獰猛に過ぎる面構えですな。右目の下に赤い刺青があり、眼力が強過ぎます……現代日本だったらヤーさんだと思われても仕方ない目付きです。
だって、著者の瘤久保慎司さんが第一巻の冒頭で書いてますもの。
『一目見て危険人物とわかる、狂犬じみた顔』と。
まぁ、言葉をうだうだとこねくりまわすより、このパワフルな指名手配写真を見て貰った方が私の伝えたいことがまるっとわかることでしょう。
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
ビスコの顔を見た登場キャラの一人が『……目線だけで、ハエぐらい、落ちそうだな……』と言うのも納得でしょう?
さて、赤星ビスコ、という名前を聞いて首を傾げる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
だって、赤星『ビスコ』ですよ? 阪神タイガースのファンの方であれば赤星の方に反応するかもしれませんが、『ビスコ』って何と言われたら、江崎グリコの『ビスコ』を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
ちなみに『錆喰いビスコ』の舞台は荒廃後の未来の日本なので、当然のことながらビスコというお菓子も存在します。マジです、一巻からお菓子のビスコが登場します。登場したのはバター味のビスコ。
もっともビスコは、このお話しでビスコを食べるまで、ビスコを口にしたことがありませんでした。『……都市の人間は、毎日こんなもの食ってんのか……』と言いながら尋常ではない速度で食べまくり、三箱目に手をかけたところで、相棒のミロに嗜められています。
そんな赤星ビスコですが、彼の印象はどんなものかと尋ねられたら、私はこう答えます。
一に豪快、二に強引、三四が無くて五に獰猛(笑)
なんか、力で解決しそうな単語がこれでもかと並んでいますが、私は最初にこう述べています。
この物語の勢いと言うかパワーというか、そういったものをコイツ一人で半分以上は出しているんじゃないかと思う程、こう、荒々しい、と。
群馬県から指名手配されているのに、群馬から出る際にはスナカバ兵とかいう、機銃や大砲を背中の部分に括りつけたカバから逃げ切っているし、忌浜県に入ってからも、エスカルゴ空機なる、文中の摸写から推測するに飛行機の機械部分とカタツムリの生体部分がドッキングしたような爆撃機(このような兵器類は、作中では『動物兵器』と呼称されています)を、人間業ではない所業で撃墜していますし……具体的に言うと、弓矢で撃墜しています。
引用 瘤久保慎司 赤岸K/電撃文庫
まぁ面構えからして戦闘狂っぽい感じですが……でも戦闘狂ではありませんよ。
ただ、まぁ人間業ではない膂力と技術を持っている、というだけで。
だって、弓矢で爆撃機撃墜とかって、竹槍でB29戦略爆撃機落とすようなものです、人間業ではない、という形容もおかしくないでしょう?
実際作中でも『人間の業ではなかった』と言われていますし……
こういう超人的な能力は主人公補正がかかっていると言っても良いでしょう、別名ご都合主義とも言いますが、ヒーローものなので、そういうご都合主義なら仕方ない、ご馳走様です(オイ)。
そんなビスコですが、序盤は師匠であるいジャビと共に、アクタガワと言う名の蟹に乗って旅をしています。
蟹に乗る、とかいうパワーワード。私もビスコを読んでいなければ、誤字脱字の類をまずは考えますが、事実です。
カバに銃取り付けたり、カタツムリが飛行機と合体して空飛んでいるんです、巨大な蟹に乗るくらいならカワイイものでしょう(オイ)
凶悪な顔に反して、情に篤い男です。
師匠のジャビは、ある病にかかっています。身体が錆び付いていき、最終的には死に至る病です。
この病をどうにかしようと、ビスコは旅をしていましたが、先程のカタツムリの爆撃で、師匠のジャビは生死にかかわる負傷をしてしまいます。
県から指名手配がかかっている状況下にもかかわらず、師匠を助けるために医者を探しに街へ赴く、というのは、やっぱりどんな悪人面であっても主人公なんだなと思わせる情の篤さ。
そして強引(笑)
まぁ、師匠のジャビが負傷して、自分は県から指名手配を受けているという状況下であれば、手段を選んでいられないのも無理はないでしょうが、後の相棒となる医師の猫柳ミロを『つべこべ言ったら、悪いけど、殺すぞ』
うーん、これは悪党ですよビスコさん、ちょいと強引に過ぎます。
相手がミロだったから良かったようなものの、普通なら脅迫としか受け取られかねない……まぁ、師匠のジャビに命の危険がある、という情状酌量の余地は多分にある状況下ですが。
そもそもビスコが指名手配を受けているのは、そこかしこにキノコをバラ撒いてしまうから。
錆喰いビスコの舞台である日本では、あらゆるものを錆び付かせてしまう『錆び風』というものが存在し、これは人であっても例外ではなく、錆び付かせてしまう恐ろしい存在です。
そう、師匠のジャビも、この『錆び風』によって身体に錆が出てしまっています。
この『錆び風』の対抗手段である『錆喰い』というキノコを探すことがビスコの目的なのですが、どういう訳か周囲の登場人物たちは、皆、キノコが錆びの原因だと考えているんですよね。
一方のビスコは、錆びの唯一の対抗手段がキノコである、と。
そんな二つの認識のもと、ビスコは遠慮無くキノコを至る所で根付かせてしまう訳です。
周囲の登場人物は、錆びの原因であるキノコを辺りにばら撒く極悪非道なテロリスト、という認識を持ち。
一方のビスコは、錆を抑えるキノコを育てて、喜んでもらいこそすれ、追いかけられる謂れは無い、という認識。
これ、どっちが本当なのかは物語の冒頭で明らかになります。
錆びに身体が侵されていたジャビとミロの姉であるパウーは、キノコを使ったアンプルで容態が安定していますので、周囲の『キノコが錆びの原因』という情報が間違っている訳です。
これまでビスコの印象や性格、仰天するようなエピソードをまとめてきましたが、超人的な活躍をする彼にも苦手なものがあります。
それは、調剤。
キノコを使ったアンプル、という単語が出てきましたが、それは、彼が作ったものではないのです。
ビスコの師匠であるジャビも、こう語っています。
『お前にゃ、ワシのやれる事ァ、全部教えた。菌術。蟹乗り。弓術……弓ならもう、お前のが上手い』
ここだけなら、凄くよくできたお弟子さんなんですが……
『薬の調剤だけはお前、ひひ、てんでダメだったがよ』
そう、ビスコ、薬の調剤だけはダメらしいんですよね。
まぁ、あの豪快で強引で獰猛が服を着ているような人間に、精密かつ精緻な調剤をするのは、無理でしょう(笑)
まぁ、調剤のダメっぷりを差っ引いても、ビスコに並ぶキノコ守りはいない、と言うのが師匠・ジャビの評価なので、身内の贔屓もあるかもしれませんが、豪快さ強引さと獰猛さを押し出せる分野であればビスコの出番でしょう。
うん、ビスコのことを一巻分だけの内容で書いていてもツラツラと書き上がっていくのだから、その辺りはやはりキャラの特徴が色濃く出ている証拠なんでしょう。
さて、そんなビスコの声優は鈴木崚汰さん。
錆喰いビスコのPVでは、その荒々しい声で、これでもかというくらいに豪快に演じて下さっている模様。
うん、映画版の成分が濃いシリアスなジャイアン、と言うのが私のビスコに対する簡潔な印象なんですが、そのイメージに違わぬ、荒々しく、頼もしい、実に力強い鈴木崚汰さんの声。
こ、これが深夜枠の放送なのが心底惜しいと……いや、深夜枠だからこそ、ビスコのような強引な手法を取る主人公でも許容されるのかもしれませんが、人気が出たあかつきには、夕方とかのメインの時間帯に、第二期は放送して欲しいなぁ! 夜なのは録画してから見るから、リアルタイムでと言うのは厳しいぃ!