リコリス・リコイルの放送は終わりましたが、多分巷で色々と『私はこう思う』『俺は違う意見だ』みたいな感じで、色々と話し合っている事柄もあるのではないでしょうか。
何しろアラン機関やDA、リリベル、色々と謎を多く残し、千束も無事だったので2期目をやろうと思えばやれる状況ではあるでしょうから。
しかし、この第十三話(最終話)Recoil of Lycorisの中で、個人的に最大の疑問だった点は、吉松シンジが持ってきていた人工心臓は、結局どこにあったのか、という点です。
これを考察しましたが―結論から書きます。
断定は出来ません。
出来ませんが、私は吉松シンジの体内にあった、という可能性の方が強い気がしています。
引用 A-1 Pictures/アニプレックス
オイ、という突っ込みが入るのを承知で書いていますので、人工心臓の在処を書いていく前に、状況の整理をしたいと思います。
第十二話Nature versus nurtureにおいて
『千束……お前を生かす心臓は、今はここだよ。私を撃って手に入れなさい。これで、君はまだまだ生きられる、さぁ』
と、千束に実弾の入った拳銃を、自らの手で持たせ、さらにはその銃口を眉間に押し付けています。
もうここまでくると、信念、とかそういう前向きな言葉ではなく、狂気、と言った方が適切なのではと思える行動です。
そりゃ、こんな行動を取られたら、千束もたきなも、本当に人工心臓が吉松の体内にある、と考えてしまうのも無理はありません。
二人が、人工心臓は吉松の体内にある、と考えていただであろう示唆は第十三話(最終話)Recoil of Lycorisで、全ての事件が片付いた後に人工心臓が移植され、千束の逃亡先の沖縄での、千束とたきなのやり取りで示されています。
『あの後、店長が吉松のケースを持ってきたんです。心臓と一緒に、それが入ってたそうです。そういう訳で、貴女は死にません』
『ヨシさん……普通、入れないよね』
『普通は!』
『やってくれるなぁ、ヨシさん』
というやり取りがありました。
この時のたきなの台詞、『普通は!』というのが、実に不機嫌そうに告げられています。
引用 A-1 Pictures/アニプレックス
これは多分、たきなとしては、普通は入れないが、あの狂信者であればやりかねない、と思わされてしまった、というニュアンスで告げられたと私は思っています。
この一連のやり取りから、千束とたきなの二人は、吉松シンジの鞄の中に人工心臓はあって、それをミカが持ってきたから千束は生き延びることが出来た、吉松シンジは今も生きている、という感じで解釈しているのではないかと思われます。
実際にはどうかというと……十三話をご視聴の方はご存じでしょうか、吉松シンジはミカによって葬られたと思しき描写があります。
十三話の感想については、こちらから
音もなく、ただ銃が撃たれたシーンが遠目に映し出され、どのような結果に終わったのか示唆されているんですが、その前のシーンで、吉松シンジとミカの間に、こんなやり取りがありました。
姫蒲さんをあっさりとやっつけてしまったミカを見て。
吉松『お前……足は?』
ミカ『戦士は全てを見せないものだ。愛する者には特にな』
吉松『フッ、お前はウソばっかりだな』
ミカ『全て千束のためだ、そうだろうシンジ?』
吉松『私は、わかって貰えなかったよ……見ろ、返されてしまった。私はもう、いらないみたいだ』
ミカ『シンジ、導いてくれるのは子ども達なんだ、私達が知らない世界に。彼等の選択を、邪魔してはいけない』
吉松『つまり、ここでお別れか』
ミカ『そこにあるんだろ』
吉松『千束は信じなかったぞ』
ミカ『シンジはウソを言わない』
吉松『今さら嬉しくないな。フッ、狂わされたな、お前も、あの子に』
ミカ『そうだな』
ミカ、発砲。
というやり取りがありました。
吉松の言葉とミカの反応から、ミカは吉松の体内に人工心臓があると確信しているように思えます。
『シンジはウソを言わない』という言葉がミカの内心の全てを物語っていますし、千束もたきなも、人工心臓が入った鞄をミカが持ってくる前までは、吉松シンジの体内に人工心臓があると考えていたでしょう(二人共、ただの一度も鞄の中身を確認していないのですから)
これが、吉松の体内に人工心臓があった可能性の方が強い気がする、と私が考えた理由ですね。
そもそも、ミカは第七話のTime Will Tellで千束に『殺しの才能』を発揮させたがる吉松シンジに銃口を向けています。
『千束を自由にしろ!私には、この引き金を引く覚悟がある』と言いながら。
引用 A-1 Pictures/アニプレックス
しかし、ミカは引き金を引けませんでした。
吉松シンジが去った後に『覚悟なんか、ある訳ないだろう』とその場に崩れ落ちています。
そんな人物が、鞄の中に人工心臓があるのに(容易に強奪可能な状況である)、愛した男性を手にかけられるのか?
愛する娘と、愛する男、どちらかしか選べない……だからこそ、娘を選んだミカは吉松を撃った、と私は考えます。
ちょっと待て、じゃあミカが人工心臓入った鞄持ってきた、というたきなの発言はどうなるんだ? と思う方もいらっしゃるでしょう。
こちらのシーンを見て下さい。
ミカは『吉松シンジの鞄』を階段に置いて、吉松シンジが千束にあてた手紙を見ているシーンですね。
引用 A-1 Pictures/アニプレックス
手紙の内容は、『おめでとう千束。君の新たな人生の始まりは、私の死によって完成した。君の幸せを心より願う』というもの。
しかもこのシーンでは、くるみが『ミカ、執刀医と契約した。待ってるからな』とも言っています。
ミカはDAの楠木司令とも関係がありますし、クリーナー等は千束が使えることから考えても、ミカだって使用可能でしょう。
なら、人工心臓が入った吉松シンジの身体をクリーナーに病院まで運ばせ、人工心臓を摘出してから吉松シンジの鞄に入れ、偽装した上でたきなに説明することも可能でしょう。
なんだってまたそんな面倒なことをしたのかと言うと、それはただただ愛する娘、千束のためでしょう。
千束は第十二話で、『心臓が逃げる!』と悪鬼の如き形相で叫び、吉松シンジと姫蒲女史に銃を撃つ狂犬たきなにこう言っています。
狂犬たきな、というパワーワードを初めて目にした方にはこちらの記事をどうぞ。
『ヨシさんを殺して生きても、それはもう私じゃない!』
『ヨシさんの代わりに生きるのは、私には無理だよ』
千束をずっと見てきたミカならば、どれだけ吉松シンジの『救世主』としての在り方に憧れを持っていたのかは、重々承知しているでしょう。
だから、吉松シンジを葬ったことを隠すためにも、ミカは色々な偽装工作を行い、鞄の中に人工心臓があったかのように振舞ったのではないか、と私は考えています。
ですが、私がそう考えているだけで、証拠がどこにもないんです(汗)
よって、人工心臓が吉松シンジの体内にあったのか、鞄の中にあったのか断定が出来ないんですよねぇ……
どっちにせよ、ミカが吉松を葬った可能性はかなり高いので(明確に殺害した描写はありませんが、でも、ねえ)その秘密をミカは、愛する娘のために一生抱え続けるのでしょうね……
そういう精神面でも、ミカはリコリス・リコイル作中最強のキャラなのかもしれまん。