ドラマ正直不動産の第五話『仕事をする理由』の感想……実を言うと、第五話で次回予告見ていた時点からすごくこの話を待っていました。
何故って? そりゃドラマ版の正直不動産は漫画版の正直不動産と比べて、五話まではコメディ寄りで製作していることもあってか、ドラマオリジナルの部分が多く、改変されていることある点、そして前述した通り、これまでがコメディ寄りのお話しが多かく、シリアスな成分が少なかったから。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
全編通してシリアスな話もたまには観たくなりますからね。
この第六話は漫画版の第9直を、永瀬と桐山が二人で『最初』から担当したらどうなるか、という漫画のIFバージョンとも言うべきもの。
漫画版では『最初』、永瀬が一人で担当していたものでした。
そして、登坂社長から『季節外れのボーナスだ』と言ってこの物件を担当することになります。
当初永瀬は、登坂社長の言う通り、季節外れのボーナスと言っても良い、すぐに客が見つかるボーナス案件のように思っていたんですが、竹鶴工務店という悪徳業者が元請け業者が一枚噛んでいたがために、建築基準法に違反するような条件で下請け業者に案件を放り投げていたため、永瀬が独力では売り切れなかった案件なんですよね。
そこを、漫画版では桐山が助け舟を出すことで乗り切れた訳ですが、ドラマ版ではどうなるのか。
ドラマ放送が始まって10分もしないところで、月下が衛藤明子さんの物件を売却するべく話を聞いているんですが、これは漫画版では第7直の新・中間省略登記の話でして、漫画版では月下ではなく、永瀬が担当していた案件なんですよね。
開始10分でこの話、どうなるのかなぁ~と想いながら観させて頂きましたが―
桐山と永瀬、二人が建築されている途中の物件を見に行くんですが、桐山が建築に必要な金物を削っていることに気付きます―まぁ、桐山の略歴と言うか、生い立ちを考えると、確かに彼は気付きそう。
そして下請けの秋川工務店に建築プランの見直しをしてもらうべく、永瀬が建築現場で手伝いを始めるのですが、そこに花澤がやってきて、この物件をミネルヴァ不動産でも担当することを永瀬に告げにやってくるんですよね。
そのちょっと前のシーンでは、花澤がミネルヴァ不動産の社長の鵤から、この物件を売るように指示されるのですが、この際に花澤から、どうして登坂不動産を標的にする理由を尋ねるんですが―いやぁ、何か高橋克典さんが演じる鵤社長、漫画版と比べるとちょいとスケールダウンしているイメージが(汗)
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
こういうことを、腹に隠し持って、物腰柔らかく接してくる悪党ですからね、鵤は(ガクブルガクブル)
高橋さんの演技がどうのこうの、というよりも、多分、ドラマを成立させる上でわかりやすくヒール(悪役)の構造を作るべく、製作サイドの方で、こういうわかりやすさを鵤に求めたのではないかと思います。
視聴者にわかりやすく、意図的にわかりやすい悪役めいたつくりにしているのではないか、と。
前回のお話しの感想で、こう書いているんですよね私。
【高橋克典さん、なんか威風堂々という漢字で、ワルって感じのマフィアスタイルなんですが―これ、もし鵤と登坂が原作の人物像のままならば、逆に登坂社長と鵤聖人の役を、草刈さんと変えていた方が良かったんじゃないかなぁ、と個人的には思っていたりします。
いや、高橋さんダーティーな感じを出されているんですが、外見だけなら、原作では登坂社長の方がマフィアスタイルをしているので(笑)
そう、服装からして逆転しているんですよね、登坂社長と鵤社長。
原作では登坂社長がマフィアスタイルで、鵤社長はごく普通のスーツ姿。月下なんか当初は『鵤社長、物腰が柔らかくていい人そうだったのに……』と漫画版では言っていましたからね。
物腰柔らかく、黒縁メガネのスーツ、ですからね。
逆に登坂社長はスキンヘッドのマフィアスタイル。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
原作では永瀬が、月下の先程の『鵤社長、物腰が柔らかくていい人そうだったのに……』という台詞を受けて、『悪い奴ほど悪くは見せないさ』『まぁ……見た目なら、うちの上層部は、悪役商会だぞ』と言っているほどなので。
その辺を改変しているのはわかりやすさを求めた結果なのでしょうねえ。登坂社長を柔和なイメージがある草刈正雄さんにしたのも、その点を考えたからでしょうか?
今回、笑いが少ない回なんですが、飲み会での大河部長の『妙案がある』からの飲み会での策の空振りっぷりは見事な道化(笑)
永瀬の『妙案ってまさか……桐山に美女を侍らせてベロベロにしてスパイかどうか確かめるつもりか。なんというバカみたいな作戦なんだ』と真顔で呟くの、ウケます(笑)
そして絡み酒で光友銀行の榎本さんが絡んできますが、何か榎本さん、漫画版よりもキャラが濃いなぁ(笑)
この飲み会が終わると、月下は衛藤明子さんの物件の件で、一億の価値があるのに7500万で売ろうとする理由を聞きますが、『アレは俺のモノだ』と一蹴する桐山。
ここは、ねえ……原作で桐山は会社への背信行為ともいうべきことをやりかけていたので、まさか、と思っているんですが、これは原作既読者に対するミスリードでしょうねえ。私も「おいおい桐山、まさか……」と思いましたからねえ。
この辺りは、どういうふうに視聴者に見て貰うか、という事を考えていくと、その一つに、いかにどんでん返しを行うか、と考えると思うんですよね。
そういう意味では、うまく原作のアイディアを取り入れつつ改変しているなぁと感心します。
現にドラマ版桐山は、衛藤さんの物件に関して、1億の価値がある物件を、7500万で売ろうとする理由が、漫画版桐山のような理由ではなく、客である衛藤さんのためを考えてのことでした(ケアハウスに入居するための資金が早急に必要なこと、代わりに解体費用などは買い主負担で、引き渡し後にトラブルにならないよう免責特約をつけています)
また、桐山がNPO団体の買い手を見つけてくる所は原作に準拠しておりますが、漫画では助け舟を出す形でかかわっていたのですが―桐山と二人で商談を行うとこういう形になるんだろうなぁ。
桐山の過去については、こちらも原作準拠。
桐山の父親の会社が、建設を請け負ったマンションの壁にヒビが入り傾いた事件があり、自殺してしまったこと。
引用 大谷アキラ 夏原武 水野光博/小学館
『あれだけ会社に尽くした人間を、元請けも会社も、全ての責任を押し付けて、トカゲの尻尾きりのように簡単に見捨てた』
『親父の無念を晴らすため、建設業界に就職しようとしたんですけど……全滅でした』
『その時、痛感したんです。どれだけ時間が経っても人は変わらない』
『それで……建設が無理なら少しでも建設業に近い不動産業界を選びました。ここで実績を作って、いつか会社を興して。親父みたいな真面目な社員が報われる職場を作ろって』
『だから営業成績にこだわってたんです』
桐山、漫画版の彼も良い奴だけど、ドラマ版の桐山もナイスガイだー(号泣)
ミネルヴァの鵤社長と会っていたのは、桐山の父親の件で『欠陥マンションを建てた父親の息子から家なんて買いたいと思うかね? 当然、そんな人間を雇っている登坂不動産の信用もどうなるか』と脅されていたのです。
これを受け、桐山は会社に迷惑をかける、と退職願を出すのですがここで草刈正雄さん、原作の登坂社長のように肝の据わったことを言います。
『そんなこと気にしなくてよい、うちの社員は私が全力で守る』
と言うのですが、桐山の決意はかたく、彼の考えを翻すには至りませんでした。
第六話で昼行燈ではなく、社長らしさを見せてきてくれたので、鵤との対決で登坂社長がどのように振舞われるのかも期待。
でも桐山ここで退社かー……終盤にまた再登場してくれることを願って、第六話の感想を終えたいと思います。